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 “変容フーグop.11”
CNC(楽譜のテンポと関連づけない作品)
なぜ今、チュフォレッティが音楽と絵画を結びつけようと試みたかといえば、そこには相対的な無意識の連続的な衝動があるからである。つまり、音が視覚となって連鎖されて表現

されているのである。チュフォレッティの絵画のすべては、作曲家の厳選された曲を聴きながら精神的な無意識の連鎖を作り上げている。つまりオートマティスムを表現したものである。とはいえ、初期の作品はロジックに基づきながらも衝動的連鎖を通して構成されている。
ヴィオリニストであるチュフォレッティは音によってヴァイオリンの弓を動かす上下の動作には数学的な長さの決まりがあることを知っている。それを絵画に取り入る試みをした。それがバッハのフーガである。これは画家パオロ・クレーの影響でもあるが、チュフォレッティもまた音楽と絵画という区別を乗り越えた芸術を目指した。フーガをヴァイオリンで弾くと弓は最初に上に向かっていく、そして下がる。9個音符の主旋律が6角形を作り、これが絵の母体となる。6個の音符で6角形をつくり、その中に残りの3個の音符で△をつくる。これが主旋律で、全部で12の主旋律ができあがった。6角形を描くとき、必ず上の点から左下に向かって描く。フーガにある主旋律は全部で27個となった。

メトロノーム記号

視覚芸術となる作品にメトロノーム記号を絵画の左上に記載したのは、重要な説得力をもつポイントなのだ。作品が二次元空間を作り出すからである(それを空間スピードCSFとなづける)。異なるスピードが異なる構成を作り出し、異なヴァリエーションをもたらすのだ。

1 J.S.Bach 
“「呼吸」作品 23/24b”
 from BWV 1001

2 J.S.Bach
“「呼吸」作品23”
from Goldberg Variations

3 J.S.Bach
“「呼吸」作品24b”
from Goldberg Variations 

「さすらい人」 – CC(楽譜のテンポに従って描く作品)–

バッハの「ファンタジー(幻想曲)」BWV562の曲をチュフォレッティは「さすらい」と名付けた。
4分の4拍子のバッハのオルガン曲「ファンタジーハ短調」は、みごとに構成された五声のポリフォニーによるもので、悲嘆と懊悩に満ちた曲調である。この繊細な音楽のポイントは4箇所(10、21、48、67の小節目)にあり、それらのポイントは絵画のなかにも点で示されている。この絵画に見られるすべての線の長さは、曲を聴きながらその曲のテンポと同じながさで描いたものであり、そのテンポに合わせて構成されている。まさに音楽が動作によって描かれた瞬間である。そのテンポとはメトロノームでいうところのᖱ = 52である。 

4 J.S.Bach
「さすらい人」作品30

5 J.S.Bach
「さすらい人」作品58
Nihal(うさぎ座)

6 J.S.Bach
「さすらい人」作品59
Regor(ほ座ガンマ星)

7 J.S.Bach
「さすらい人」作品

8 J.S.Bach
「さすらい人」作品69
Anwar al Farkadain(こぐま座)

9 J.S.Bach
「さすらい人」作品47
Skat(みじずがめ座)

10 J.S.Bach
「さすらい人」作品64
Mirach(アンドロメダ座)

11 J.S.Bach
「さすらい人」作品73
Polaris(北極星)

12 J.S.Bach
「さすらい人」作品76
Caph(カシオベヤ座)

13 J.S.Bach
「さすらい人」作品78
Chort(しし座) 

「主キリストよ、汝を呼ぶ」作品84 
オルガンのためのコラール へ短調

この絵画は音楽を聴きながらそのテンポ通りに描くのと(CC)、そうでないのと(CNC)の両方が混ざり合った作品である。一人の人間がキリストに助けを求め、祈りを捧げる曲に、チュフォレッティはインスピレーションを得た。苦悩の中から人は地平線を見つけついには難題を解いていく.苦悩は三角形のなかの線にあらわれている。三角形の頂点が神であり、そこに人間はたどり着こうとするかなかなか行けず、行ったり来たりしながらついには地平線が見え始め、△から飛び出すその瞬間に神が救うのである。7つの小節を7つの△にわけて、そのなかにリトネロ形式で反復回帰を描くことで人間の苦悩を現した。これは精神的無意識の世界でおこる想像が具現化したものである。音楽と絵画の融合作品である。

14 J.S.Bach
「主キリストよ、汝を呼ぶ」
作品84

「黒のフーガ」
BWV 1080 – CC 

ヴァイオリンを弾くことを趣味とした画家のパウル・クレーは、1921年に「赤のフーガ」という絵画を世に出した。これはバッハのフーガから構想を得たものだが、チュフォレッティもクレーから影響され「音楽を描いた絵画」として「黒のフーガ」を独自の感性で描いた。音楽用語であるフーガとは対位法を主体とした楽曲形式の一つであるが、バッハはこのフーガの形式を用いて「フーガの技法」を作曲する。第1から第14までのフーガを「コントラプンクトゥス(対位)」と名付けるが、最後である第14のコントラプンクトゥスは突然中断され、そこでバッハは息絶えた。この「フーガの技法」は「未完のフーガ」とも呼ばれている。後世の作曲家達が断絶した曲の続きを完成させるが、イタリアの現代作曲家して名高いルチアーノ・ベリオもその一人である。チュフォレッティが描いた「黒のフーガ 10」はそのベリオが完成させた「フーガの技法」を聴き、描いたのが特徴である。作品を鑑賞するときのポイントとして視線を下から上げてほしい。自己のエゴというものが頂点で消え去る、そんなイメージをチュフォレッティはとらえたのだ。

15 J.S.Bach
「黒のフーガ第1」フーガの技法

16 J.S.Bach
黒のフーガ第4」フーガの技法

17 J.S.Bach
「黒のフーガ第1」フーガの技法

18 J.S.Bach
黒のフーガ第4」フーガの技法